伊丹市は兵庫県の最も大阪寄りに位置する衛星都市で、近くに大阪、神戸、京都という大都市を控えています。ごく近くにある国立、県立、市立の大きな美術館に伍して存在理由を明らかにするために個性ある運営を志し、「諷刺とユーモア」をコンセプトに蒐集活動を進めてきました。

館蔵品の大きな柱は、19世紀フランス美術を代表する作家の一人、オノレ・ドーミエのコレクションで、これを核としてドーミエと同時代の諷刺画家たちの作品、また時代を遡ってイギリスで活躍したウィリアム・ホガースやジェイムズ・ギルレイ、下っては明治の初めに日本で活躍したフランス人画家ジョルジュ・ビゴーの作品などを多数所蔵しています。日本の近代諷刺雑誌も加えると、市民社会の成立とともに興り、発展していった諷刺画の系譜を概観できる内容と質を誇っています。

同じく「諷刺とユーモア」の精神のもと行ってきた展示活動をとおして、また当館の活動にご賛同、ご理解くださった作家やそのご遺族あるいは蒐集家の方々からのご厚意によって、現代美術をはじめ様々な作品を収蔵することができ、現在では諷刺画という分野の枠を超えた人間性豊かなコレクションを形成しています。

1.19世紀フランスの諷刺画

19世紀中葉のフランスでは最新情報を新たな価値とする近代ジャーナリズムが興りました。誕生して間もないリトグラフを活用することで新聞のヴィジュアル化が進み、「カリカチュール」(1830年創刊)、「シャリヴァリ」(1832年創刊)といった絵入諷刺雑誌・新聞が次々と創刊されました。そこで活躍したのがグランヴィル、ドーミエ、ガヴァルニといった気鋭の諷刺画家たちです。痛烈な政治諷刺や市井の人々を活写した風俗諷刺など、それぞれに個性を発揮しました。

当館ではこの3人の画家をはじめ、諷刺雑誌を彩った画家たちの作品を多数所蔵しています。



2.18世紀~19世紀のイギリスの諷刺画

イギリスに独自の絵画様式をもたらした最初の国民画家ホガースは、イギリス人特有の鋭い生活観察と批判精神によって政治の腐敗や社会の悪臭に鋭く切り込み、諷刺画の父とも呼ばれました。ホガース以降も社会風俗でのトマス・ローランドソン(1756-1827)、政治でのジェイムズ・ギルレイ、その後継者ジョージ・クルックシャンクなどの版画家たちが登場し、18世紀から19世紀にかけて諷刺版画の黄金時代を築きました。

ホガース、ギルレイ、クルックシャンクの主要な作品を当館では所蔵しています。




3.20世紀ドイツの画家たち

大戦の世紀にドイツの画家たちはときに激しい怒りをもって時代の表情を版に描きました。当館の所蔵であるケーテ・コルヴィッツ(1867-1945)の《農民戦争》(1921)、オットー・ディックス(1891-1969)の《サーカス》(1922)、マックス・ペヒシュタイン(1881-1955)の《われらの父》(1921)の作品からも、そうした緊張感が伝わってきます。ドイツ美術の所蔵点数は決して多くはありませんが、当館のコレクションの中で重要な位置を占めています。




4.西洋の近代諷刺雑誌

諷刺画史上燦然と輝くフランスの「カリカチュール」。その成功を受けて、続けて発行された日刊紙の諷刺新聞「シャリヴァリ」。さらに「シャリヴァリ」の精神を引き継ぎ、1841年から1922年まで約150年にわたり刊行されたイギリスの「パンチーロンドン・シャリヴァリ」等を所蔵しています。




5.日本の近代諷刺雑誌

明治維新後に自由民権運動が活発化するなか、1877年(明治10)に野村文夫(1836-1891)によって「団団珍聞」が創刊されました。

その「団団珍聞」に魅了されジャーナリストを志したのが、宮武外骨(1867-1955)です。彼が創刊した「頓智協会雑誌」(1887年創刊)、「滑稽新聞」(1900年創刊)等は、滑稽雑誌・漫画雑誌のブームを引き起こし、その動きは北澤楽天(1876-1955)主宰の「東京パック」(1905年創刊)、さらには1906年に創刊され日本最長寿の漫画雑誌となった「大阪パック」へとつながりました。

それぞれの点数はわずかながらも、こうした系譜を辿れる雑誌を当館では所蔵しています。




6.戦後日本と芸術家たち

戦争への強い怒りを作品へと昇華させた浜田知明をはじめとして、反骨精神に満ちた井上長三郎や武田秀雄、あるいは独自の寓意的、抽象的世界を探求した小牧源太郎など、個性豊かな作家の作品を所蔵しています。小牧のアトリエに遺されていた貴重な資料も当館に収められています。

このほか関西の版画界で活躍した浅野竹二の約400点におよぶ作品、あるいは前田藤四郎旧蔵の資料なども収蔵しています。




7.伊丹と現代美術

当館では開館以来、川俣正、渡辺豊重(1931- )、土谷武(1926-2004)、江口週、菅木志雄(1944- )らによる現代彫刻や絵画を、また今村輝久(1918-2004)、森口宏一(1930-2011)、山田光(1923-2001)、福岡道雄(1936- )など関西の現代美術を牽引してきた作家を展覧会を通じて紹介し、コレクションしてきました。いずれも日本の美術史上に重要な足跡を残す作家たちです。ここではその中から、とりわけ伊丹の地と関係の深い作品を紹介します。




8.その他のコレクション

諷刺画のコレクションの他、当館には秀逸な油彩作品や来館者の目を楽しませる作品があります。その中から代表的な作品、作家を取り上げ紹介します。




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